そのキスの代償は…(Berry’s版)【完】
あの人は鞄からカギを出し、鍵穴に挿しこむ。

カギを回すと「ガチャ」っと大きな音がする。

その音に私の心臓が飛び跳ねた。


「今ならまだ、間に合うぞ」


あの人はドアを開け一歩中に入り、暗闇の中から私をねめつけた。

白い瞳に釘付けになる。その時右の眉が一瞬くいっとあがる。


もう自分の気持ちから逃げない。

私は黙ったまま、そのドアに思い切って一歩足を踏み入れた。

吸い込まれるような瞳に囚われて、何も言えなくなる。


「俺は人間の感情をとおの昔に捨てた男だ。

…文字通りただ、男としてお前を抱くしかできない」


あの人はそれから一呼吸置き、


「それ以上何かを求められても…無理だ」


それは衝撃的な…宣告だった。


やっと自由になったのに…

やっと自分の気持ちに向き合ったのに…

やっと正直になったのに…


その結果がこれ?

それでも私は受け入れるしかないとその時思った。

そして口から溢れ出そうな感情を飲み込み、


「…はい」


とだけ応える。
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