そのキスの代償は…(Berry’s版)【完】

解約

その紙をあの人から受け取る。






それは…

「愛人契約書」というタイトル。




金銭以外の一切の見返りを求めない。
それは…情の繋がりではなく残酷な契約関係。

奥さんが用意するには余りにも…

あり得ない、でも妻としての彼女の権利と立場が
絶対的であると見せつけるような内容を記した紙切れだった。

「これにサインして欲しい。これがうちの奴の条件だそうだ」

私は、目を見開いた。

「別れて。それが一番でしょ。ばれたんだし…情事は終わり」

私は込み上げる涙を押し込むように、
無理矢理な高笑いをあの人に向かってした。

一瞬あの人の瞳が切なく燻る。

その瞳に動揺させられて私の笑い声は止まる。
だめだ。今の私は心が無防備すぎる。

「嫌だ。最初の約束通り、俺は転勤するまでは別れない。
あいつはむしろ別れるなと言っている。
ただ「これにサインさせろ」と」

「なんで…私がそれにサインしなきゃいけないの?
奥様公認の愛人になれって?」

「セフレの今と何が違う?今だって、似たような関係じゃないか」

「どうして別れるなって?なんで?私は、私は…」
< 34 / 71 >

この作品をシェア

pagetop