そのキスの代償は…(Berry’s版)【完】
その躰

契約

そのまま、寝たのか寝ていないのか
わからないまま迎えた翌日早朝、
まだ夜明けまで2時間程ある。
こんな時間にメール。

見たくもないが、もしや母からかと思うと
娘たちの事も気になり仕方がなく携帯に手を伸ばした。

[悪いが起きたら
こっちの部屋に来てほしい。]

それは、あの人からだった。

昨日の今朝、私があの人の部屋に行っていいのだろうか?

あの人と2人で部屋にいてもいいのだろうか?

それでも、わたしはあの人から呼ばれた誘惑には
逆らえなかった。







コンコン。おそるおそるドアをノックをすると、
あの人がドアを開け、迎えてくれる。

こんなふうに、笑顔で迎えてくれるのも…初めてだ。
その姿は見慣れているのに、
戸口に立つあの人の姿が不思議でならない。

「入ってくれ」

「でも…」

躊躇する私に柔らかく微笑みながら、

「取って喰おうってわけじゃない。話し合おう」

その表情に負けてしまった私は、
仕方がなさそうに部屋に足を踏み入れた。

それから、聞かされたことに、私は絶句した。

奥様は…あの後、連絡をして、あの人の部屋に
佐伯というあの時の男を伴ってきたらしい。

そして、1通の契約書を置いて帰ったそうだ。
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