悪魔の彼






静かな廊下に、響くのは足音だけ。




重い沈黙が続いて、少し気分が落ち込んできていたちょうどその時だった。






「心の準備は……?」





ふと前方から声がした。


ラギールのどちらかといえば甘いような、イアとは全くと言って良いほど違う声だった。





彼は何度も此処へ入っている。王子だから当たり前だとは思うが……


そのため、あまり抵抗はないはずだ。




フランテもそうだとは思うが、何しろ久しぶりだ。


そんな1番なれているはずの彼が声をかけてくれたのは、彼なりの優しさなのだろう。







「私はもちろん。皆はどうだ?」



フランテが振り向きざまにちらりと私の方を見ながら言った。











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