悪魔の彼




「父上……よろしいですか?」






はっと前を見る。






そこには、私達よりも一歩前へ出たラギールの姿があった。



肩が少しはっていて、緊張しているようだった。








私は目の前の開いた扉からあちらへと入ることすら躊躇っていた。



心臓が凄い勢いで高鳴りをましていく。





ゆっくりと足を上げ一歩ずつ踏み出す。






彼は顔を俯かせたままこちらを見ようとしない。


疲労の色が浮かんでいることは眉間のシワでわかった。





「ラギールか……?来たのだな。母上、気配でわかります。いらっしゃったのですね?」






彼はそう言ったが、相変わらず顔は上げない。


そんな彼の姿に我慢が出来なくなったのか、フランテが彼に向かって言った。








「いつまでそうしているんだい?顔をお上げなさい。」









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