悪魔の彼




彼は浮かない顔をした。



とは言っても、最初から不機嫌だったためさほど表情に変わりは無かった。






「母上の言うことなら……」










そして






顔を上げた。
















大きく見開かれた目に光りが戻ってきた。



いや、涙が溜まっていたのだ。




「君は………リナ姫か?」









えっ?





あまりの事に、声さえでなかった。



私彼に対して緊張して足がすくむ一方、どこか温かい包容力を感じていた。







気づいてくれると思っていた。




それなのに、まさかこんな事になるなんて思ってもいなかった。







「リナ姫、大きくなったなぁ。それにしても久しぶりだ。今日はニアは体調を崩していてなぁ……」





彼は話しつづける。







だんだんと今日会ったばかりなのに、懐かしい気持ちが大きくなって来ていた事に気付いた。









< 299 / 400 >

この作品をシェア

pagetop