悪魔の彼
彼は浮かない顔をした。
とは言っても、最初から不機嫌だったためさほど表情に変わりは無かった。
「母上の言うことなら……」
そして
顔を上げた。
大きく見開かれた目に光りが戻ってきた。
いや、涙が溜まっていたのだ。
「君は………リナ姫か?」
えっ?
あまりの事に、声さえでなかった。
私彼に対して緊張して足がすくむ一方、どこか温かい包容力を感じていた。
気づいてくれると思っていた。
それなのに、まさかこんな事になるなんて思ってもいなかった。
「リナ姫、大きくなったなぁ。それにしても久しぶりだ。今日はニアは体調を崩していてなぁ……」
彼は話しつづける。
だんだんと今日会ったばかりなのに、懐かしい気持ちが大きくなって来ていた事に気付いた。
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