はじまりは政略結婚
思わず反対の手で、薬指を隠してしまった。

「これは……智紀がくれたものなんだけど。うまくいってるとか、そんなんじゃないよ」

どうしても素直になれなくて、そんなことを言ってしまったけど、兄にはお見通しみたいだ。

ニコッと笑い、「分かった、分かった」と聞き流している。

「それより由香、今からどこへ行くんだ?」

「私は、駅前の本屋に買い出しに行くの。お兄ちゃんは?」

「オレは得意先からの帰り。といっても、昼過ぎにまたアポがあってさ。先に昼メシでも取ろうかと、思ってたんだけど……」

チラッと私を見るその視線に、ニヤけずにはいられない。

ちょうど昼休憩に差し掛かるタイミングだったから、ついでに済ませていいと言われていたのだった。

「じゃあ、一緒に行こうよ。私も、外でお昼を取るつもりだったから」
< 110 / 360 >

この作品をシェア

pagetop