はじまりは政略結婚
「じゃあ、海岸沿いのレストランなんてどうかな? ここからだと、一時間くらいだと思うんだけど……。 『サカナケ』ってお店、知ってる?」

「知ってる。『サカナ家』って書く店だろ? 魚介類が新鮮で有名な、確かイタリアンだよな?」

さすが智紀は、それほど敷居の高くない店もよく知っている。

「うん。私ね、友達と一回行ったことがあるの。外れた場所にあるから、落ち着いた雰囲気だし、海も眺められてキレイなのよ」

「へえ……。じゃあ、そこにしようか?」

一応、賛成してくれたみたいだけど、思ったよりはノリが悪い。

あんまり、好みじゃなかったのかな……。

静かなところがいいと言っても、私が思う場所とは違っていたのかもしれない。

「うん。そうしようね」

だけど結局、『他の場所にする?』と聞く勇気が持てれずに、とりあえずの予定は、サカナケに向かうことになった。

そしてもう一つ、気になったことは、明日は休みで時間を気にしなくていいのに、智紀が抱いてくれなかったこと。

別に期待していたわけじゃないけど、もしかして……と思っていた私は、拍子抜けしてしまった。
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