はじまりは政略結婚
里奈さんは、私の薬指に光る婚約指輪を睨みつけている。

「あの、それって智紀のことを言ってるんですか……?」

おずおず問いかけると、彼女は私の手を思い切り振りほどき、さらに険しく睨みつけた。

「当たり前でしょ? 他に誰が、あなたを好きになるっていうの? でもまあ、政略結婚なら、智紀が本気で好きなはずがないか」

掴まれた手に、ジンジンと痛みを感じながら、私はもう泣きそうだ。

確かに、私を誰が好きになってくれるというんだろう。

それに、元カノ里奈さんから、智紀が本気で好きになるはずがないって言われると、かなり凹んでしまう。

やっぱり、不自然な組み合わせに見えるんだ……。

悔しいけど、言い返す言葉が見つからない。

伏し目がちの私に、里奈さんは畳み掛けるように言ったのだった。

「私ね、半年前まで智紀と付き合ってたの。だけど、一方的に別れを告げられたと思ったら、突然あなたと政略結婚なんて、ハッキリ言って納得出来ない」
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