はじまりは政略結婚
『海里推し』に、一気に青ざめる。

「もしかして桜さんは、海里のファンなの?」

もともと、『海里』という芸名で活動しているから、私が呼び捨てにしても違和感に感じる人なんていない。

だけどこの名前を口にすると、付き合っていた頃の彼を思い出して、切なさが蘇ってくる。

「はい。子供の頃からのファンで、彼に憧れて芸能界を目指したんです。活動休止はショックだったけど、また復帰するじゃないですか? だから、きっと会えると信じて、頑張ろうと思ってるんです」

「そ、そうなんですか……」

やっぱりここは、私が出入りする場所じゃない。

気楽に足を運んでいたら、いつかは海里に会いそうだ。

「じゃあ桜さん、今度こそ本当に失礼します」

とにかく早く局を出ようと思い、桜さんに会釈をすると、なぜだか今度は腕を掴まれた。

「何ですか……?」

涙目になりかけた私に、彼女は明るい調子で言ったのだった。

「良かったら、連絡先を交換しません?」
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