はじまりは政略結婚
そう決めて、マンションまでの道を歩いて帰ると、タッチの差で智紀が帰っていたのだった。

リビングに入ると、スマホ片手に驚いた顔でこちらを振り向いた。

「ただいま、智紀。早かったのね。どこかに電話中だった?」

さっきの里奈さんの言葉がリフレインされて、一瞬イヤな予感がしてくる。

今でも連絡を取り合って、会っている二人。

まさかその電話は、里奈さんてことはない……?

すると智紀はスマホをリビングテーブルに置くと、足早に私の側へ来た。

「由香に電話しようと思ってたんだよ。帰ってきてもいないから。心配したろ? まさか、ずっとテレビ局にいたのか?」

苦い顔で彼に言われるのももっともで、壁掛け時計をチラッと見ると、二時間はあそこにいたことになる。

「うん。ごめんなさい。まさか、ここまで遅くなってたなんて……」

小さくなる私に、智紀は両手を腰に当て、ため息混じりに言ったのだった。

「まさか、海里に会いに行ってた?」
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