はじまりは政略結婚
「思わない。オレは、由香の見た目に惹かれたわけじゃないから。地味だろうが、派手だろうが関係ないよ」

「社長令嬢って立場は……?」

恐る恐る問いかけると、智紀はさらに首を振ったのだった。

「それこそ、ますます関係ないだろ? 政略結婚は、由香を自分の方に向かせたくて取ったオレのズルイ手段。お前の立場が欲しいんじゃない。由香自身が欲しいんだ」

智紀の力強い口調に、胸がだんだん高鳴ってくる。

「私自身……?」

「そう。由香はオレの前だと、あまり笑わないだろ? もっと笑わせたい、ずっとそう思ってた。オレに媚びを売る女ばかりの中で、由香だけは違って見えたから」

「智紀……。ありがとう」

私にそんな気持ちを抱いてくれていることが、純粋に嬉しく思う。

不覚にも、じわりと涙が浮かんできたのを、智紀は見逃さなかった。

「なかなか気持ちを切り替えるのも難しいとは思うけど、オレを信じて欲しい。元彼とは違うから」
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