はじまりは政略結婚
心配そうに覗き込まれて、私は慌てて立ち上がる。

テレビ局の社長だけあって、何度かテレビでも見かけていただけに、その方が目の前にいると思うと妙に緊張する。

改めて見ると智紀はお父さん似で、彼を渋くした雰囲気が嶋谷社長だ。

「いえ……。あの、智紀さんからのプロポーズって、本当なんでしょうか?」

おずおず見上げながら問いかけると、その答えは背後から素っ気なく返ってきた。

「当たり前だろ? じゃなきゃ、そんなダイヤの指輪を贈るかよ」

それは智紀で、振り返るとけだるそうに私を見ている。

「智紀、そういう言い方はないだろ?由香ちゃんは事情を知らなかったんだ。もう少し優しい言い方は出来ないのか?」

諭すようなお父さんの言葉にも、智紀は無愛想な態度を崩さない。

結局、自分だって結婚が嫌なんじゃない。

それなのに、あんな演出をしてプロポーズをしたことが、ある意味スゴイと思う。

智紀に返事を返すつもりはなく、わざと顔をそむけると、困った顔をした兄が見えた。
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