はじまりは政略結婚
頬が緩む私とは違い、智紀は恥ずかしそうに両手で顔を覆った。

彼が、こんな茶目っ気のある一面を持っていたことが分かって、かなり嬉しかったりする。

「ったく佐江は、余計なことを話すよな。それより、なんで行ったの? 予約なんて取れなかったろ?」

観念したように顔を向けた智紀は、小さくため息をついている。

「あ、それはお兄ちゃんに聞いて行ったの。タイミング良く佐江さんがいてくれて……」

「また『お兄ちゃん』か。あのさ、由香」

今度は深いため息をつき、私の腰に両手を回して引き寄せた。

覗き込まれるように顔を近づけられて、ドキドキする。

「な、何?」

智紀はムッとした表情をしつつも、手は優しく私の背中を撫で始めた。

「これからは、どんな些細なことでもいい。祐也じゃなくて、オレに相談してくれないか?」
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