はじまりは政略結婚
「うん……」

と返事をしつつも、意識が背中に向いてしまい、ほとんど気もそぞろな返事だ。

「本当だからな? 分かったか?」

意地悪く念押しする智紀に小さく頷いた瞬間、ふいに唇を塞がれた。

離しては塞ぎ、また塞いでは離し……。

そんなじらすようなキスに、どこかもどかしさを感じる。

「もっとキスして、智紀……」

突然のキスでも驚くどころか我慢が出来なくて、彼の背中に手を回しながら呟いた。

「じゃあ、もっと顔を見せて」

両手で頬を包み込み、智紀は私の顔を上げる。

何度見ても、彼の顔はうっとりするほど、均衡の取れたきれいな顔立ちをしている。

「智紀も、ヘアスタイルを変えて、急に大人な感じになったよね? それまでは、とにかく華やかな感じだったけど……」

すると智紀は、今日一番恥ずかしそうな顔をした。

「だって、かぶってるだろ? 由香の元カレと」
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