はじまりは政略結婚
「海里とってこと? そういわれれば……」

思い起こせば、以前の智紀のヘアスタイルと似ている。

「だから、髪型を変えたってこと……?」

まさか、それが理由でイメチェンしていたとは思わず、呆気に取られる。

すると、智紀は口をへの字にして言ったのだった。

「思い出されたら嫌だろ? オレを見ながら、海里のことなんて思い出して欲しくないんだよ」

「智紀ってば……。そんなこと、思い出すわけないじゃない」

そう言いながら、チクッと胸が痛んだのは、さっきまで海里に会っていたからだ。

不意打ちとはいえ、手まで握られてしまって罪悪感が込み上げる。

だけど、あの写真のことは言えない。

智紀のことは信じているから、涼子さんとの仲を疑ったりはしないけれど、話すことで彼に心配をかけさせたくなかった。
< 228 / 360 >

この作品をシェア

pagetop