はじまりは政略結婚
真っ直ぐ彼を見つめ、真剣な口調で言った。

すると海里は、眉間にシワを寄せて途端に表情を硬くしたのだった。

「ネガごと? そんな要求が飲めるわけないだろ? だいたい、何を考えてそんなことを言ってるんだ?」

「智紀と涼子さんを守りたいから。海里が、あの写真をマスコミに売ったことくらい分かってるんだから」

本当に、なんて卑劣なんだろう。

付き合っていた頃は、そんな人じゃなかったのに。

すっかり人が変わった海里に寂しさすら感じるけど、今の私にとっては、智紀の方が何倍も大切な人だ。

「へぇ。さすが。もう情報をキャッチしたのか。どうせ、嶋谷から聞いたんだろ? 権力のある奴は違うよな」

まるで小馬鹿にするように、海里は鼻で笑っている。

それが余計に、私の神経を逆なでした。

「智紀に恨みがあるの?」

私に未練があるような振りをしていたけど、きっと違うと彼の言い方で分かった気がした。

「さすが、ちゃんと分かってるじゃないか。そうだよ。何もかも手に入れようとする嶋谷が、オレは大嫌いなんだ」
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