はじまりは政略結婚
桜さんは、どうしても海里と里奈さんが引っかかるようで、私に伝えたかったと付け加えた。

海里はともかく、里奈さんはどういうことだろう。

まさか、彼女が写真を撮った張本人とか……?

だけど、里奈さんも智紀のことを好きな人だ。

いくらなんでも、好きな人を陥れることをするなんて、考えにくいけど……。

「それを、どうしても百瀬さんに伝えたかったんです。もし、何か掛け違えただけの問題なら、婚約破棄なんて悲しいことはしないでください」

桜さんは、まるで自分のことのように必死で言ってくれ、私は「ありがとう」としか返事ができなかった。

本当は、もっと話したそうだったけど、スケジュールが詰まっている彼女は、忙しそうに準備に戻っていく。

そして私はというと、心が整理しきれないまま、テレビ局の玄関までボーッとしながら歩いていたのだった。
< 272 / 360 >

この作品をシェア

pagetop