はじまりは政略結婚
もし、里奈さんが写真を撮った人だったら……?

仮にそうなら、智紀だってショックなはずだ。

だって、なんだかんだ言って元カノなのだから、好きだった人の裏切りをなんとも思わないはずがない。

だから、それは違って欲しいと思ってしまう。

一体、どうしてこんなことになったのか……。

深いため息をついた時、聞き慣れた声が聞こえてきて、思わず柱の陰に隠れてしまった。

それは、紛れもなく智紀の声で、チラリと柱から覗くと、スマホ片手に険しい顔で「すぐ行く」と言っている。

仕事でトラブルでもあったのかもしれないけど、声をかけることができないのが切ない。

愚痴でもなんでも、聞いてあげたいのに。

智紀の支えになりたいのに、それができない自分がもどかしい。

すぐに彼の姿はテレビ局の外へと消えていったけど、会えた喜びと好きだという気持ちを改めて感じて、胸が押し潰されそうになる。

好き……、大好き……。

智紀が好きなのに、どうして別れるという選択を取らないといけないの?

なんで、彼と一緒にいたいという気持ちを、阻まれないといけないんだろう。
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