はじまりは政略結婚
「やめてよ、そんな風に言うのは……」

いたたまれなくて、思わず顔をそらしてしまった。

今までも、彼氏から『可愛い』だとか、『好き』だとかは言われたことがある。

だけど、智紀はへたに顔なじみで知っている人だけに、緊張してしまうのだ。

だって、私が苦手だと思って見ていた時に、智紀は私のことを好きだと思って見ていたってことだから。

「何で? オレのことを好きじゃないから、告白されて迷惑だった?」

「違うよ。そうじゃないの。だって、智紀が私を好きだったんだって想像したら、恥ずかしくて何て反応したらいいか分からないんだもの……」

俯きかけると智紀は、少し強い力で顎を引き上げた。

今まで見たことのない真面目な顔つきで真っ直ぐ見つめられ、ドキドキする自分自身に戸惑う。

「政略結婚なんて強引な手段でも使わないと、由香はきっとオレを見てくれないと思ったんだ。必ず振り向かせるから、お前を」

「智紀……」

派手でノリの軽い人で、ついでに性格も軽いんだと思っていたのに、意外な一面を見せられた私は、政略結婚の白紙をすっかり忘れていた。
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