はじまりは政略結婚
からかっているわけじゃないことは、相手が苦手なタイプの人とはいえ分かる。

まさか、智紀が私を好きだったなんて、想像すら出来なかったから、頭の中は混乱状態だ。

「だけど、何で私なの? 智紀ぐらいだったら、キレイな女性は選び放題だと思うんだけど……」

おずおず問いかけると、なぜだか智紀はムッとした様に眉をしかめた。

「何で、そう思うんだよ?」

「え? だってテレビ局の副社長だし、一応イケメンだし……?」

最後の方は照れ臭くて声が小さくなったけど、『イケメン』という言葉には反応していないみたいで、大きくため息をつかれた。

いつかの経済誌のコメントには、食いついてきたのに……。

「やっぱり、それだよな。女がオレに食いつく要素って」

落胆気味の智紀に、私は「イケメンってこと?」と聞くと、キツく睨まれてしまった。

「そうじゃないよ。副社長ってこと。誰もかれも、オレの肩書きが好きみたいだ」

その口ぶりだと、今まで散々痛い目に遭ったみたいに聞こえるけど、今は聞かないでおこう。

改めてそんな風に言われると、『副社長』という立場も、大変なのかもしれない。

「だから、オレはモデルも女優も好きじゃない。社長令嬢なのに普通過ぎて、地味なのを好むけど、とびきり可愛い由香が好きなんだ」
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