はじまりは政略結婚

「ど、どうして智紀をそんなに憎むの？」

まさか、あの記事を売ったのは智紀とか……？

最悪のパターンを思い浮かべ、声が震えてくる。

「由香、読んだんだろ？ 週刊誌の内容に間違いはない。オレは両親に捨てられて、施設で育った。おかげで、子供の頃はイジメにあってたけどな」

「そう……だったの？」

海里がイジメにあっていたなんて、まるで想像もできない。

私が知っている海里は、自信があって野心もあって、重い過去を背負っているようには見えなかったから。

「そうだよ。オレが、モデルを目指すきっかけになったのは、今の社長に拾われたから。嶋谷のライバル事務所のな」

とにかく、智紀の名前を出す海里の顔が怖い。

ただ黙って聞くのが精一杯なほど、彼への憎しみが強いのが分かった。

「高校生の頃、荒れかけてたオレをスカウトしてくれたんだ。人生を、これから始めてみないかってね」