春のバス停と大先輩
娘さんのことを話すおばあちゃんは、楽しそうだ。


きっと自慢の娘さんなんだな。



「娘さんは今、何歳なんですか?」

と、あたしが聞くと、おばあちゃんは遠くに向けていた視線をあたしの目に戻した。


「もう死んじゃったの。」


本当に軽い言い方で、あたしは謝るタイミングが見付けられなかった。


「…あ、そうなんですか。」


「癌でねぇ、亡くなっちゃったのよ~…。
44歳だったのよ。」


「……そうなんですか…。」


あたしは何も言えなくって、おばあちゃんの目から視線をそらして、自分の膝を見た。



それから、おばあちゃんは、遠い空を見ながら、ゆっくりと娘さんについて話してくれた。
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