color ~蒼の色~

友達。

全ての授業が終わり、私はまどかの手を引いて、足早に学校を出た。

「総二郎、まだ授業残ってるの、先に帰ろう」

「うん」

「でね、今日はうちに来ない?」

「え?蒼ちゃんち?」

「そう、ご飯食べていきなよ」

そう言えば、また涙目でうなづいたまどか。
うちについてからも、店の手伝いを一緒にしながら、他愛もない話で笑いあった。

「おーつかれー」

ガラッとドアが開き、遅れて総二郎がやってきた。

「おやっさん、俺もメシご馳走してよ」

「お前、今日稽古行かなくていいのか?」

「勘弁してよ」

笑う父に3人分の夕食を持たされ、私の部屋で食べた。
私が初めて総二郎以外の誰かを食事に誘ったものだから、父もいつもより奮発した夕食を出してくれた。

「美味しかった、すごいね、蒼ちゃんのお父さん」

「でしょ?私、今見習い中!」

ひとしきり食事を終え、食後のデザートを食べていると、まどかが言った。

「今日はありがとう、それと…ごめんね、嫌な思いさせて」

机の上に置かれた手は震えていて、この言葉にどれほど勇気をこめたのかが、嫌というほどよくわかった。

「あのね、まどか」

私も座りなおし、向かい合うように座った。

「私ね、小学生のとき、いじめられてた」

「え?」

驚いたような顔をしたまどか。
そして私の膝の上で揃えられていた手に、突然熱が伝わった。

総二郎の手が、私の手をギュッと握っていた。
その手が“頑張れ”って言ってるようで。

「ほっとけばいい、相手にしなきゃいい。そう思ってたんだけどね、結局私、強くなかった」


そんな強さ、私にはなかったこと。
妙なあだ名から始まり、ランドセル事件、クラスメイトの態度。

その全てをまどかに伝えた。
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