color ~蒼の色~
総二郎の少し後ろを歩く私は、その背中を見つめながら言った。

「ありがとう」

総二郎は立ち止まり、私を振り返った。

「何が?」

突然かけられた、私からの感謝の言葉の意味を探っているのだろう。
じっと私を見つめていた。
私もその視線から目を逸らすことはせず、同じように見つめ返した。

「あの時、助けてくれてありがとう」

「あの時?」

小学4年生のあの時、総二郎が助けてくれなければ、間違いなく今の自分はいなかった。
こんなふうに、まどかを助けてあげたいとも思わなかっただろう。

「一緒にいてくれたから、私、今こんなに強くいられるんだと思う」

「……………………」

理解しているのか、していないのか。
返事をすることもなく、ただ黙って私の話を聞いていた。

「一緒に走ってくれたから。泣いていいよって言ってくれたから」

どんどん、どんどん。
言葉が溢れてきて、そして私の気持ちも、ある確信へと近づいていって。
一度堰を切った言葉は、止まることをしらず、真っ直ぐに総二郎に向かっていく。

「あの時、救われたの。総二郎が今の私を作ったの。強くしてくれた」

真っ直ぐ、真っ直ぐ。
今、貴方だけ見つめて言いたいの。

「あの時から、ずっと総二郎は私の中で特別なの」

何か返事が欲しかったわけじゃない。
ただ伝えたかった、今のこの気持ち。

好き。
大好き。

もっともっと近づきたい。
総二郎の中で、特別な“女の子”になりたい。

「帰ろっか」

言い切ったことへの自己満足か、私は自覚した気持ちをもう一度胸にしまい、総二郎の横をすり抜け、歩き出そうとした。
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