ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「……契約成立だ!」
彼が神経質そうな声で言うと、颯の手首の内側に、バリバリと音を立てた、小さな電流が見えた。
「っ……!なんだこりゃ……っ」
「颯……!」
その電流はレーザーのように、颯の手首に模様を焼き付けていく。
ただ手をにぎっているだけのシリウスが、なんでこんなことができるのか疑問だけど。
(それより、痛そう……!)
額から汗が吹き出ているのに、総長のプライドからか悲鳴をかみ殺す颯に、仁菜は寄り添う。
「もうやめて!」
「ならぬ……黙っていろ、ニーナ殿!」
「痛そうじゃない!突然なによ!やめてあげてよっ!」
シリウスの手をとろうとした仁菜を、何者かが後ろからふわりと抱きしめる。
柔らかいようでいながら、抵抗を許さない頑固な腕は、ラスのものだった。
「すぐ終わるから待ってて、ニーナ」
「ちょ……っ」
そんなことをしている間に、颯の手首の模様は完成してしまった。
バチバチッと大きな音を立てて電流は止み、シリウスは颯から手を離す。