ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「すげー!なんだこれ、すげー!しびー(渋い)!」
「コレにのって、ちょっと外に出るよ」
「マジかああっ!?」
颯は今までにない笑顔で、カミーユから運転法を教えてもらっている。
そんな颯を、仁菜は少し冷めた目で、遠くから見ていた。
(いいよねえ、おバカは。
バイクさえあれば、どこでも楽園なんだね……ん?)
よく見ると、出てきた異世界バイクは3台。
自分たちは6人。
(ってことは、誰かと二人乗り……?)
と、いうか。
(ここ、けっこうな高さがあるけど……あのバイクで、いったいどうやって外へ?)
疑問に思っていると、颯が曇りのない笑顔で「ニーナ!」と手招きをした。
「なんで、もうまたがっっちゃってんのよう……」
「ぶつくさ言ってねえで、後ろに乗れよ!」
「はあ?」
「バカ王子は何かあっちゃいけないから、シリウスに載せてもらうんだと!」
颯が指差した方を見ると、ラスが少し不満げに、シリウスの後ろに載っていた。
そして、きゅっとシリウスの腹に手をまわし、頬を背中にぴたりとつけた。
(か、かわいいんだけど!)
仁菜は腐女子ではない。断じて、そうではない。
BL漫画なんて読んだことないし、そうじゃないアニメもラノベも、今まで全く興味なかったんだけど……。
萌え……。
仁菜は自分の中に、腐女子の芽が芽生えつつあるのを感じた。