ヤンキー君と異世界に行く。【完】
仁菜たちはあっという間に縄で縛られ、牢屋に引っ立てられた。
「わああ……」
牢は木の枝を弦で縛ったものでできており、地上にぽんとうち捨てられていた。
その目の前には、仁菜が見たこともない巨木。
無数の枝が伸び、頭上に張り巡らされている。
(緑のドームみたい。
っていうか、『こえだ○ゃんハウス』みたい!)
大人50人が手をつないでも囲みきれないほどの太い幹の中から、ちかちかとオレンジ色の灯りが見える。
そしてその幹と枝の間の股にも、小さな家が無数に引っかかっていた。
「これが、精霊族の王の城であり、彼らの主な住居でもあるという、巨木ですか……すごいですねえ……」
カミーユは関心したように言い、タブレットで写真を撮りまくっていて、精霊族に叱られた。
(そんな場合じゃないでしょうよ……)
牢屋の中でぺたりと座り、悲しげにデータを消去するカミーユ。
未だに怒りがおさまらず、木の城をぎらぎらにらみつけるシリウス。
そんな彼のひざに座り、ちーんと落ち込むラス。
何も言わず、腕組みをし、あぐらをかいて瞑想しているアレク。
(このひとたち、やる気あんの?)
仁菜は今までの自分のへっぴり腰加減を棚に上げ、彼らをにらみつけた。
窮地に立たされたときに強いのは、やっぱり男ではなく、女子。
そして、何も考えないバカである。
「おーい、お兄さんたちよぉ。
なんとかしようぜー」
颯は、異世界人たちの背中を叩きながら牢屋の中を歩く。