ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「うるさいなあ、颯。
今、何ができるっていうのさ。
そこに見張りがいるのに」
ラスがシリウスから離れ、立ち上がる。
「どうやってここから出るか、話しあうんだよ」
「だから、聞かれてたら意味ないだろ?
この世界の人間、魔族、精霊族は、それぞれ違う言葉を使っているけど、意味はすぐ理解できるんだ。
耳にそういうフィルターが、生まれつきついてるんだよ」
ラスの説明に、大人たちがうなずく。
「……ちょっと待ってください。
少し前から、あたしたち何語でしゃべってるんだろうと思ってたんです。
まさか……」
日本語と少し響きは違うけど、ラスたち人間の言葉も、精霊の言葉も理解できた。
ここで疑問が仁菜の頭に生まれる。
異世界トリップ物語で誰もが思うであろう、「何語で話してんの?」
その答えを、カミーユがあっさり暴露。
「あ、あなたたちが寝ているすきに、耳に機械を埋め込ませていただきました。
知らない言葉でも、意味が理解できる……あなたたちの国の言葉に聞こえるようにする装置です。
これは精神派と音波と、あなたたちの言語に関する記憶とをあわせてですねえ……」
カミーユの難しい説明は、途中から頭に入って来なかった。
(なにそれ!勝手にわけわかんない装置をつけないでよ!
しかも、埋め込むって?埋め込むって?)
仁菜は想像しようとして、やめた。
耳の中を想像も付かない器具で切開され、異世界の装置を入れられたなんて、考えただけで痛い。