ヤンキー君と異世界に行く。【完】
命をかけても、守りたい場所。
それはラスやシリウス、カミーユにとってはランドミルであり、
アレクにとっては、愛するひととの思い出がある、精霊の泉。
颯にとってはきっと、チームの集会場所。マヌケだけど。
(……あたしにとっては?)
そんなもの、ない。
家も学校も、なくなっちゃってもいいと思う。
生きる目的も、ない。
将来の夢は?希望は?
好きなものすら、まだ選んでない。
(そんなの、考えてる場合じゃない……)
急に襲いかかる虚無感を、仁菜は振り払う。
(今を生き延びなくてどうするのっ!)
しっかり前を向いた仁菜の目の前で、セードリク王は静かにうなずいた。
そして彼らに、泉に向かう許可が与えられたのである。