ヤンキー君と異世界に行く。【完】


「ランドミルの人間は、みんな自分の『石』を持って生まれてきます。

それを魔法で加工したものを、ほとんどの人はお守りとして持っている。

僕たちは、それを武器に換えたわけです」


♪世界にひとつだけの石~♪

仁菜の頭に、替え歌が響いた。


「一生自分を守護してくれると言う石だからね。

加工するときも、その個人にあった形になるんだ」


「ほーなるほど。アレクはでっけえから斧で、ラスはちっちぇえから、その細い剣なわけだな」


颯がからかうと、ラスは妖艶に笑う。


「……バカにしない方がいいよ?

隠れて見てなよ、丸腰くん」


そう言うと、彼らは最後の茂みを抜ける。


颯と仁菜はひとまず隠れて見ていることにした。


(あれが……泉……)


彼らの前に広がる光景は、アレクの昔語りからは想像できないものだった。


たしかに美しい泉はあるが、その周りには薄く霧が立ちこめ、草花には踏み荒らされたようなあと。

そして、傷ついた精霊たちが倒れていた。


「魔族はどこだ!」


シリウスが声を上げると、うずくまっていたひとりの精霊が、それに答える。


「……う、え……」


「うえ?」


「ラス様、上です!」


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