ヤンキー君と異世界に行く。【完】
カミーユが指差したのは、泉の真上だった。
仁菜も颯も、つられて上を見上げる。
そこにいたのは……。
「……颯、なにあれ……」
「でっけえカラス?」
「違うんじゃない……?」
そこにいたのは、漆黒の翼と青いくちばしをもつ、巨大な鳥だった。
その額には、二つの目とは別にもう一つの目が付いている。
(ひょえええ、バケモノきたあぁぁぁぁっ!)
仁菜は初めて間近で見る魔族に、完全にびびった。
「カミーユ!」
ラスが声をあげるが早いか、カミーユが弓をかまえ、弦を引き絞る。
「撃てぇッ!!」
いつもより強く響くその声を合図に、カミーユが鳥にむかって矢を放った。
(当たる──!)
ブンと弓が鳴る音と共に放たれた矢は、鳥の頭部を貫通すると思われた。
しかし……。
鳥は、その巨体のわりに信じられない速さで方向を変え、矢を避けてしまった。
「ちっ!」
ラスの舌打ちが響く。
「おい、やばくねえか?」
颯がぶるぶる震える仁菜の肩をたたく。
「うん、やばい。相当やばいの来たね。こわ~……」
「マジやべーな。
相手が空中にいるのに弓矢で歯が立たないってのは、不利だろ?
傷を負わせられないってことじゃん」
「えっ」
颯、そんなこと考える余裕あるの?
仁菜は颯を見直しかける。が……
「ゲームでよくやったもんなー、RPG」
がくん。
やっぱりね。