フローズン・パール


 その二人が、また変わりだしたのは一体いつからなのだろうか。

 ハッキリと線引きは出来ないけど、それは段々少しずつ、二人の毎日の中に侵入して、侵食し、じわじわと灰色に染め上げていったのだろう。

 ゆっくりと、だけど確実に。ペースは遅くともじりじりと全体にその灰色は染み込んでいく。

 ファスナーの噛み合わせがうまくいかなくなるみたいに、何かしらのイライラすることがあったわけではない。

 残業を入れるようになった。

 休日に別行動をとるようになった。

 片方が朝ごはんに起きれなくなって、片方が夕ご飯に間に合わなくなった。

 会話の途中に電話に出るようになった。

 相手の言うことに興味がなくなり、ノイズに思えるようになった。

 右から左だ。いくら聞いてるフリをしても頭にちっとも残ってないから相手を怒らせてしまう。

 喧嘩をした後、怒って出て行くなんてことが起こりだした。

 笑顔が少なくなり、挨拶がなくなった。

 そして今では―――――――――――――・・・・


「ねえ」

 ある日、私は呼びかけてみた。

 彼はダイニングの椅子に座って新聞紙を開けながら反応しない。


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