Blood Tear


屋敷の庭で兵士達が2人の侵入者と敵対していた頃、最上階のある一室にはコウガとシェノーラの姿があった。




 「ジークが、死ぬ……?違う…そんなの望んでい…… 私は、私は彼を護りたくて…彼に生きて欲しくて……なのに、どうして……」


ジークがローグと戦っている。
命を捨てる覚悟で…


その言葉を聞いたシェノーラは動揺し、車椅子から転げ落ちてしまった。




 「お願い……彼を…ジークを助けて……彼を失いたくないの……」


床を這いコウガとの距離を縮めた彼女は鉄格子を掴み彼に懇願する。


電流が身体を駆け巡るが、彼女は鉄格子を放す事なく握り締め、揺れる瞳でコウガを見つめる。




 「大丈夫。レグルも付いてるし、彼はそう簡単に命を落としたりしない」


膝を降り彼女と視線を合わせると震える彼女の手を握る。


落ち着かせようと頭を撫でようとしたが鉄格子にそれを阻まれてしまう。




 「ジークは生きて帰ってくる。君を助けに、きっと此処へ」


優しく語りかけると彼女は落ち着いたのか握り締めていた鉄格子を放し両手を床につけ顔を伏せる。




 「会えなくてもいい……彼が生きてくれさえいれば、それだけで……」


 「何故、君は嘘をつく?」


顔を伏せ震える両手を握る彼女の言葉にコウガは呟く。


本当は傍に居て欲しいのに、失いたくないのに、彼女は彼を突き放した。


それは彼の為であり自分の為。


大切なものを失う位なら、大切なものなど作らなければいい。


自分が幸せになる事で誰かが苦しむのなら、幸せなんていらない。



彼女は自分にそう言い聞かせ、自分に嘘をついてきた。




 「君は自由になるべきだ。これ以上、此処に縛られる必要はない。もう誰も、君のせいで傷ついたりしないから」


人間としての喜びを失っていた彼女を救いたい。


そう思ったコウガは足枷の鍵を彼女へと投げ渡した。










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