Blood Tear


バルコニーに1人、夜風に当たりながら夜空を見上げるのはコウガ。


手すりに腕を乗せ暗い空の中から星を探していた彼は背後から近づく気配に振り返る。



部屋からバルコニーに移る一歩手前、其処に居たのは飲み物を手に微笑むシェイラ。


彼女はコウガに飲み物を渡すと隣に立ち外を眺める。




 「最後になるのですね、あの国の姿を目にするのも……」


シェイラとして生きて行く事にした彼女。


シェノーラが死んだ事となった以上、彼女は国に入る事も、傍に居る事さえもできなくなった。



遠くに見えるスウィール国を見つめる彼女は少し悲しそうに見える。


重い空気を作ってしまったと、ハッとした彼女は視線をそらし町中に背を向けた。


飲み物を一口口に運ぶと本来の目的へと話を戻す。




 「コウガさんには助けてもらってばかりですね。森で会った時も、今回も」


 「俺は只、手を貸しただけだよ。礼を言われるような事はしてないさ」


 「そんな事はありません。私は貴方のお陰だと、そう 思っていますよ、コウガさん」


グラスを両手で握り微笑むシェイラ。


その笑顔は偽物ではなく、本物の笑顔。


決して他人の為に作ったものではない、優しい彼女の笑顔だった。




 「良かった」


 「え?」


 「君はちゃんと笑えてる。心配しなくても大丈夫みたいだ」


コウガの優しい笑顔に頬を赤らめながらシェイラも微笑む。


他人の事を心配してくれる彼は本当に良い人なのだと実感するのだった。










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