バイセクシュアル
暑い夏
「明日から夏休みが始まりますが、部活は明日からもあります。
進学希望の三年生には貴重な部活にもなりますので、欠席が多くならないよう部活動に参加してください」
『は~い』
「それでは、今日のミーティングはここまで、あとは活動したい生徒はしていきなさい。
最後に部室を出る生徒は戸締りをきちんとしていく事」
先生はそれだけを言い残し部室を後にした。
「ねえねえ、春は次のコンクールのタイトルとか決まった?」
前の席に座っていた友達の美希が振り向いて聞いてきた。
「次のって、確か夏休み明けてすぐのだったよね?」
「そうそう!募集テーマとか自由みたいだけど」
「全く浮かばないわ」
「だよね、第一何で一年の活動期間の中で、コンクールや美術展への出展が四回以下だと退部なるんだか。」
「多分幽霊部員とか無くす為なんじゃない?ほらここの高校って部活全員参加ってなってるし」
「変なとこクソ真面目だよね」
クスクスとこんな話をしながら、今までの出展された作品集眺めていた。
雨の匂いとむせ返る暑い気温が部室にまで届く。
「明日からの活動のメインは専らこれだね」
美希がパタンと作品集を閉じそう言った。
今までは何となくタイトルを決め、なんとなく絵を描いて、なんとなく出展してきた。
それでも顧問にはきちんと活動をしていると思われてきた。
でも今度のはテーマが自由とはいえ、もう自分でこれ!と言って決めれるテーマも無くなってしまい、切羽詰ってしまいそう。
「まあ、明日から決めても遅くはないよね」
「そうだよ、明日からでも遅くないでしょ!もう今日は帰ろう」
「そうだね」
私たちは世間話をしながら美術室を後にした。
あれ?最後に出たの私たちだっけ?
玄関で思い出した。
「春?どったの?」
「あ…もしかしてさ、美術室最後に出たのって、私ら最後だったかな?」
「え?どうだっけ~」
「ちょっと確かめてくる、美希ここで待っててよ」
「あー、分かった」
私はそう言って、荷物と美希を玄関に置いて、三階まで戻った。
「事務のおばちゃんとか鍵の管理うるさいからな~」
以前、部室の戸締りと鍵の返却をし忘れた際、事務のおばちゃんに怒られたのを思い出し、渋い表情になった。
また怒られるのは勘弁だな~。
なんて思いながら、美術室のドアを開いた。
ちょうど強い夏の風が教室に入り込み、暗幕を大きく膨らました。
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