恋するマジックアワー

外に出た瞬間肌を刺す、12月の冷たい空気。

高いビルの向こう側に冬の澄んだ空が見える。
わたしの吐き出す息は、雲のように白く空の青に消えた。


たくさんの人。

でも、洸さんの姿を見失わずにいれて。
迷わずその背中を追った。


たまらず走り出す。

大きな歩幅で歩く洸さんに、追いつくのはやっとだった。


もう少しっ

行き交う人にぶつかりそうになりながらも、その姿を捕えて手を伸ばした。



「っ……こ、洸さんっ」



服の裾をしっかりつかんで、クイッと引く。

後ろにバランスを崩しながら振り向いた洸さんは、その瞳を大きく見開いた。



「海ちゃん?」

「やっほ」



えへへと笑って「何してるの?」と洸さんの手荷物を覗き込んだ。


「ああこれ? 買い出しの途中」

「買い出し?」

「そ。クリスマスの」

「……」


クリスマス。

……そっか。
洸さん、もう予定入っちゃってるんだ……。

掴んでいた袖をそっと離す。

見れば、その紙袋の中にはたくさんの雑貨が入っていた。

どうしよう。
聞くだけ聞いてみようかな……。


「あの、洸さん……」

「ん?」

「あのね?あの……24日なんだけど、」


モゴモゴと言うと、聞きづらかったのか洸さんがその顔を寄せた。


「え?なんて?」

「っ」


ふわりと香る、甘い香水の香りにクラッとする。
ボンって一気に体温が上昇して、思わず俯いた。


言わなきゃ……。

意を決して顔を上げたその時だった。


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