恋するマジックアワー(仮)


……ほんと、なにがしたいんだろうあたし。


「はあ……」


中庭のベンチに力なく座る。
手に持っていた小さな紙袋をひざの上に乗せ、またため息。


結局、作ってしまった。

いない時をみはからって作っていたはずが、途中で帰ってきた洸さんにばっちり見られた。

…………しかも。


『なに? チョコレート? ああ、バレンタインか。大人に見つかんないようにしろよ~。見つかったら没収だぞ。俺? 俺は何も見てない。今は君の同居人だ』


そう、言われる始末。
そしてそのまま自分の部屋に引っ込もうとして、最後に思い出したように――……。


『あ、そうそう。俺明日は泊まり込みの作業があるから。戸締りしっかりするよーに』


返事をする間もなく扉が閉まり……。
バタン!って音が、あたしと洸さんの間の境界を念押されたように感じたんだよね。



< 157 / 222 >

この作品をシェア

pagetop