恋するマジックアワー(仮)
「ここで個展やってるなんて、よくわかったね」
「あたしも洸さんいてびっくり……。あの、なにしてたの?見学?」
「俺? 俺は大学の教授の手伝い。 急に呼ばれてさ。まあ、安いバイトみたいなもん」
そう言って肩をすくめて見せた。
なんとも拍子抜け。
だって、話しかけられると思ってなかったから……。
それに、今”立花”じゃなくて、”海ちゃん”って……。
黒のニットベストに白いワイシャツ。
黒のスラックス姿の洸さんは、首に手を置いて小さくため息を零した。
「ーーで、君は海ちゃんのクラスメイト?」
洸さんはそう言って、三嶋くんに視線を移す。
「あ、はい。ええと、三嶋です」
三嶋くんに、誰?って耳打ちされる。
あはは。誰って三嶋くん知ってる人だけどね?
苦笑いしか出てこない。
オロオロしているあたしなんかお構いなしで、洸さんたら「ふーん」って三嶋くんを眺めた。
いやいや、洸さんだって知ってるでしょ。
まさに満面の笑み。
なんか笑顔怖くない?
三嶋くんよりも、洸さんの方が少しだけ背が高い。
そんな彼からは、それはそれは威圧的なオーラを感じる。
顔の整った人の張り付けた笑顔って、こんなに怖いんですね?
三嶋くんも三嶋くんで、ムッとしたまま洸さんから視線を外さない。
向かい合ったふたりの間に、バチバチって火花が……。
……ってどういう状況!?