恋するマジックアワー(仮)
「あれ?」
部屋の扉の前。
玄関の鍵が開いてる。
もう洸さん帰ってきてるんだ。
静かに玄関を開ける。
リビングから光が漏れていた。
すぅ~はぁ……。
なぜか小さく深呼吸をしてる自分がいたりして。
……いやいや、意識しないって決めたんだし。
あたしは、意を決してドアノブをぎゅっと握りしめた。
と、その時だった。
ーーガチャ!
「たっだいま~~!」
ものすごい勢いで背後の玄関ドアが開いたと思ったら。
底抜けに明るい声が飛んできた。
「きゃあああ!!!」
だだだだ、誰!?
ひっくり返りそうなくらい驚いて、気を抜いたら腰を抜かしそうだ。
そんなあたしと、玄関で靴を脱いで遠慮なく上がり込んだその人とばっちり目が合う。
「あ、もしかしてあなたが海ちゃん?」
「へ…………」
小さな顔に、真っ黒なショートヘアのものすごい美人さん。
ぴったりとしたジーンズとニットに身を包んだその人は、あたしを覗き込むとパッと笑顔を零した。
はつらつとした雰囲気に押され気味のあたし。
ポカンとしてると、リビングの扉があいて洸さんが顔を出した。
「おかえり」
平然と言った洸さんに、この状況がまったく理解できないあたし。
そして笑顔が咲き誇るこの女の人はもしかして……。
「愛だよ。 俺の姉さん」
やっぱり!
ため息まじりにそう言った洸さんは、ジロリと愛さんを見やる。
「えへへ。 ごめんね、びっくりした?」
そう言って、パチンとウインクを投げる愛さんに「は、はじめまして……」なんて動揺しつつ挨拶できたのは、褒めて欲しい……。