恋するマジックアワー(仮)
少しだけ落ち着いたところで、あたしと愛さんはテーブルに向かい合って座っていた。
「でも、ごめんね?急に向こうに行かなきゃならなくなっちゃって。 加えてこんな弟しか捕まえられなくて本当申し訳ない。 住む場所がなくなるほうが困るんじゃないかなって思ってさ」
「あはは……」
やばい、乾いた笑い方しかできない。
すごいな。
愛さんて、見た目のままものすごくサバサバしてる。
ん?これってサバサバじゃなくて、もしかして無神……け……。
「悪かったな、こんなんで。俺に関してはあとあとメールで状況よこしただけだけどな」
「あはは、ほんとごめん。 あの時は人生最大に焦ってて」
「あそ。人生最大、ね。 だけど今日に関しては連絡出来ただろ」
「それは面目ない。 忘れてた」
キッチンに立つ洸さん。
さっき愛さんが抱えていた買い物袋からお弁当やらを出している。
「……」
洸さんって、お姉さんの前だとまるで子供みたいだな……。
男の子って感じがして、なんだか可愛い。
頬が緩んでしまいそうで、慌てて背筋を伸ばした。
テーブルに並ぶお惣菜。
当たり前のように、あたしの前にも。
そして、愛さんの目の前にはビールが置かれた。
カシュっとプルトップを持ち上げてそれを仰ぐ。
ぷはぁと「やっぱりビールは日本のものよねぇ」としみじみ言った。
「ところでさ、海ちゃんは洸が講師してる学校の生徒さんなんでしょ」
「あ、はい」
いただきますをしてから唐揚げを口に頬張る。
うなずくと、愛さんはうーーんと頬杖をついてあたしたちを眺めた。
「それって大丈夫なの?」
あ……。
学校にバレないとか。
そういうことだよね?