恋するマジックアワー
送り火も無事に終わり、このお祭りの目玉が終わると、雨に降られないうちにと、みんな家へと帰っていく。
煙の臭いがあたりに充満している。
独自のその香りに、なんだか物悲しい気分になった。
「じゃあ、わたし達もそろそろ帰ろっか」
留美子がそう言って、わたしの手を引いて歩き出す。
古い鳥居をくぐったその時、ふと洸さんの顔を思い出した。
「あ。そうだ……」
お土産買って帰ろう。
「かわいい」ってそう言ってくれたこと、嬉しかったから。
ふたりに声をかけて、わたしは急いで来た道を戻る。
えっと、何がいいかな……。
たい焼き……は、重いか。
綿あめ……これも違うかな。
軒並み並ぶ露店に目を向けながら、ふと甘い香りに足を止めた。
それは……。
まるで宝石みたいにキラキラ光る、金平糖。
露店をたたもうとしているおじさんに声をかけて、小さなビニールの袋にいっぱいの金平糖を買った。
測り売りのそれを受け取って、軒下から出ると、瞬間鼻に何かが落ちてきた。
「……っ」
つられるように顔を上げると、ポツリまたポツリと細い雨が頬に当たる。
わ、もう降ってきちゃった……。
急がなきゃ……
慣れない下駄で走り出すと、すぐにふたりがいる鳥居が見えてきた。
ちょっとだけホッとしつつ、さらに足を進めようとしたその時。
まるですべての音を通り越すように、聞きなれた声がした。
……え?
鳥居の真下。
そこには、真剣な顔をして見つめ合う
留美子と……牧野がいた。