恋するマジックアワー
「お揃いだね」
「う、うん」
留美子が、やわらかく微笑んだままわたしを見つめていたんだ。
ドクンって、胸が鈍くなった。
そんな気がしたのは、今日ケリをつけようと決めていたのに、また性懲りもなく牧野に対してときめいてしまった事。
罪悪感
わたしは、笑う事も出来ずに、留美子の笑顔から目が逸らせなくなっていた。
でも……牧野が悪いんだよ。
留美子が悲しんでたからって、わたしにまで優しくすることない。
そんな事はしないでほしい。
「あ、ほら。送り火だよ」
留美子のその言葉に、本堂へ視線を向けた。
いくつもの松明に、煌々と炎が燃えていた。
それはユラユラと揺れて、まるでわたしの心の中みたいだ。
真っ白な煙は、ビロードの夜空へと消えていく。
夏が還る。
そして、秋がくるんだ。
瞬間、どこからともなく鈴虫の鳴き声が聞こえて来た。
「なんか、雨降りそうだね」
「え?あ、ほんとだ」
たくさんの人々が、静かに秋の訪れを感じていた時。
留美子が小さくそう言った。
見上げると、たしかに分厚い雲が空を覆っている。
それは今にも雨を落としそうだった。