恋するマジックアワー

ハッとすると、いつの間にか洸さんが隣にいて、わたしの顔を覗き込んでいた。



えっ、な、なに!!?

持っていたペットボトルを落っことしそうになって、なんとかそれを食い止めた。
でもなぜか手に力が入らない気がして、慌ててそれをステンレス台の上に置く。


あーもう、わたしなにしてんだ。
落ち着け……落ちつ……

なんて思ってると。
いきなり、目の前に手が伸びてきて、ギュムッと頬が挟まれたかと思うと、強引に顔を上げさせられた。


へっ??


洸さんはわたしの頬を両手で挟むと、物凄く真剣な眼差しを向けてくる。

キョトンとしてるわたしの事なんかお構いなしで、今日も洸さんはわたしのパーソナルスペースをいとも簡単に飛び越えてきた。



あっと言う間に、近づいた距離。
視界いっぱいに、洸さんの顔。


……引っ付いた……おでこ。



「……」




な、なにこの状況?

わたし、逃げた方がいいの?

ど、どうしよう……!?


それでも
わたしの体は、自由が奪われちゃったみたいに、洸さんから目が逸らせないでいた。




いやいや、普通に考えてこの距離おかしいよね!?



洸さんの瞳が、揺れてる。

長い睫、伏し目がちなそれは
なんとも憂いを帯びてスッと細められた。

熟れた果実のような綺麗な唇が開き、洸さんが小さく息を吸い込むがわかった。


トクン トクン トクン


慣れない距離に、心臓が勝手に加速する。

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