恋するマジックアワー
「……ごめんね!
わたし……海ちゃんがいなくなっちゃうって、勝手にそう思い込んでて。だから悔しくて……、牧野に海ちゃんがとられちゃうんじゃないかって、すごく怖くて……。ずっと隣にいたのはわたしなのにって……。
だから海ちゃんの気持ち知ってたのに素直に応援も出来なくて。
ごめんなさい……!」
「……」
嗚咽まじりにそう言って、留美子はとめどなく溢れる涙を必死で拭っている。
わたしは何も言えず、ただ黙る事しか出来なくて。
少しの沈黙と。
秋の穏やかな風が、留美子の短くて柔らかな髪を揺らし、わたしの頬を撫でた。
わたしは……なんで気がつかなかったんだろう……。
今まで誰にも懐かなかった留美子。
そんな彼女が気を許してくれた、女友達は、わたしだけだったと思う。
小さな手が震えている。
わたしはそっと留美子に近づくと、両手で留美子の手を包み込んだ。
「留美子のばか……。留美子はいちばんだよ。ずっとずっと、おばあちゃんになっても親友でいてくれるんでしょ?」
留美子がわたしの事を、すごく大事に思ってくれてる事。
すごく……すごく嬉しいよ?
わたしよりも小さな体。
繊細で儚い留美子。
「ありがとう、留美子……」
「海ちゃ……、こんな自分勝手なやつとまだ友達でいてくれるの……?」
「何言ってんの。当たり前でしょ?それ以上わたしの親友のこと悪く言うと怒るよ?」
ムッとして見せると、留美子の大きな瞳からさらに大粒の涙が零れ落ちた。
さらに泣きじゃくる留美子の背中を、ポンポンとさすった。