恋するマジックアワー
俺に言ったんじゃないって……なら、誰に?
「牧野…あの、」
「それより」
「え?」
わたしの言葉を遮るように言うと、牧野は口元を少し緩めた。
「るみの事、頼む」
……。
優しいまなざし。
大事な人を、想う言葉。
牧野はわたしが何か言い出す前に、クルリと背を向けて教室へ入って行ってしまった。
しばらく動き出せずに佇んでいると、予鈴が鳴って我に返る。
「……留美子……」
唇をキュッと噛み締めて、わたしは牧野とは反対方向へ走り出した。
留美子……どこ?
ガチャ!
勢いに任せて古びた扉を開けると、まばゆい日差しに包まれて、一瞬目が眩む。
はあっ はあっ
「……る、みこ……」
「海ちゃん……」
いた。
立ち入り禁止の屋上。
緑色のフェンスに両手をついた留美子の大きな瞳が、大きく見開かれている。
その目は充血していて、ここで泣いていたんだろうか……。
「留美子、あの……」
一歩近づいて、遠慮がちに声をかけると、小さな肩をピクッと震わせた留美子の瞳から、ポロポロと涙が流れた。