だから、恋なんて。

完全に勘違いだし、私は外来になんて手伝いに行かないし。アンタの外来が人気なんじゃなくて、もともとうちの外来はいつも患者さんで溢れてるわけで。

しかも来たばかりのアンタは前任の医者の担当患者さんを見ているだけなんだし。

「そうだ、この間打ったところ大丈夫?あれ、すごい音してたよね」

思い出したのか、フフッと笑いながら箸を置いて、私の頭にスッと手を伸ばしてくる。

「やめてください」

直視はしないように目の端で捕えてたその手をかわして、睨む。

私の後頭部のこぶを確認したかったのだろうけど、残念ながらもう一週間も経っていて、そのこぶは綺麗に消えている。


というか、このチャラ医者、気安く人に触りすぎなんだけど。

ニコニコと笑いながらまた食事を再開するチャラ医者は、私の嫌悪を込めた視線なんて気にもしていないよう。

「で、いつご飯行ける?」

だって、またこんなこと言ってる。

私、言わなかったっけ?絶対行かないってこの前きっぱり言ったはずなんだけど。

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