だから、恋なんて。
立ち上がりかけたお尻をまたブランコに押し付けると、キィっと重そうな悲鳴をあげる。
公園を取り囲むように建てられたアパートやマンションからは鼻腔を刺激する匂いが漂っていて。
あ~、お腹空いてきたな。
今日の千鶴のご飯なんだろうと思って、そうだ連絡しておかなくちゃと思う。
残業で遅くなることなんて当たり前だけど、もしかして待っててくれたら申し訳ない。
鞄の中からゴソゴソと携帯を取り出すと、メールの着信を知らせる点滅。
あ、千鶴からだ。なんだ、もしかしたら千鶴もまだ仕事が終わらないのかも。
思いながらメールを開くと、そこには思いがけない文字。
『突然でごめん。今日から家に帰るわ。荷物はまた取りに来る』
なに、なに?直人さんと仲直りしたのかな。ほんとこんなに突然に帰るなんて。
や、そりゃあ仲直りするにこしたことないし、家出も長くなると帰りづらくなるだろうし。
でも仲直りしたならなおさら、荷物も片づけずに急いで帰ることない気がする。