だから、恋なんて。

「じゃ~ん、できたよ」

ちびちびビールを口にしていると、程なくして運ばれてきたのは、色鮮やかなパスタとサラダ。

食欲をそそるスパイスの匂いと、アスパラガスやトマト、エビなんかの色味がなんだか女子的で。

「…美味しそう」

忘れていた空腹感が呼び戻される。

「でしょ?とりあえず食べようよ」

「…いただきます」

この状況にやっぱり納得はできないけど、それより何より空腹感のほうが勝ってしまって。

目の前で食い入るように見つめる男の視線をヒシヒシと感じながら、大口で頬張る。

「うっそ…、美味しい」

こんな短時間で、しかも医者が作ったものなのに……これって千鶴が作るくらい美味しいくない?

これって、私の最大級の褒め言葉だからね。どこに行っても千鶴の料理が一番美味しいって常日頃から言ってる私だからね。

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