だから、恋なんて。
いや、でもね、そんな体を折ってお腹をかかえてまで笑わなくていいんじゃない?
「ちょっと!」
「あぁ、ごめん、ごめん」
目尻に溜まった涙を人差し指で拭いながら笑う千鶴の顔はいつもと変わらない。
その笑顔にホッとして、また二人でゆっくりと歩き出す。
コツコツとヒールの音だけが二人の間に響く。
穏やかな空気のなか、千鶴がポツリポツリと話し出す。
「避妊をね、してたのよ」
「え……」
「直人には言わずに、ピル飲んでたの」
フッと口元を緩めるけれど、その瞳は何故かとても傷ついてみえた。
「直人にしたら、とんだ裏切りよね」
なんと返していいか咄嗟に思いつかない。